磁気浮上
航空技術の進歩のおかげで、ほんの数時間あればかなりの長距離や大洋の横断も可能になりました。しかし、周知の通り空の旅は高額であり多量の排出ガスを出します。航空機の運転に必要な化石燃料はもはや豊富にあるものではないため、代わりとなるものが必要です。そこで磁気浮上式鉄道が従来の交通に代わる高速交通を提供します。
磁気浮上とは単に電磁石の原理を利用して列車のような車両を従来の線路の代わりに軌道上で動かす技術です。磁界は重力の影響に対抗するために使用し、磁気浮上の全体系は、大きな電力源と軌道に沿って並んだ金属コイルそして列車底面に取り付ける大型案内用磁石という3つの要素から成り立っています。
この磁気浮上式鉄道は極めて高い収容能力を持ち、従来の列車に比べて多大な有益性を備えています。現在、磁気浮上式鉄道は1時間につき1万2000人を収容できます。これは、60機のボーイング767が1時間に収容できる人数に匹敵します。磁気浮上式鉄道は線路と接触することがないため厳しい天候下でも影響を受けにくくなっています。しかし最大の利点は石油を使わずに走ることであり、必要な電力は再生可能エネルギーなど様々な電力源から得ることができます。
現在の使用例
1. リニモ、日本
全長5.6マイルのリニモは2005年以来操業しています。当初は2005年の万博会場のために建造したこの鉄道は引き続きこの地域に貢献しています。この路線は9駅を擁し全長を時速62マイルで走行できます。初期3ヶ月の操業による乗客数は100万人にのぼり、収容能力の高さを証明しています。
2. 上海トランスラピッド
上海トランスラピッドは中国政府がドイツの磁気浮上協会、トランスラピッドとの了解覚え書きに署名した後、2004年以来操業を続けています。上海トランスラピッドは上海市の浦東国際空港と地下鉄竜陽路駅を結ぶ30キロを1日に115本走行しています。速度はリニモを上回り、平均して時速165マイルそして最高速度は時速268マイルです。また、99.97パーセントを上回る定刻率を誇ります。
3. 韓国、大田広域市の磁気浮上列車
HML-03は世界初の磁気浮上式公共鉄道であり、1994年に韓国の大田広域市で操業を開始しました。その際、2機の試作機、HML-03とHML-02を建造しました。最初の都市型磁気浮上式鉄道は2008年に大田広域市に登場したUTM-02であり、万博公園と国立中央科学館を結ぶ1キロを走行しました。
上記の各国が磁気浮上式鉄道を利用して数年が経つ中で、以下に記すように他の国々も同様に磁気浮上式鉄道を利用しています。
1. オールドドミニオン大学
オールドドミニオン大学には1マイル足らずの磁気浮上式鉄道用の軌道があります。従来の磁気浮上式鉄道とは異なり、ほとんどの磁石やセンサーそして計算処理は軌道上にはなく列車が搭載しているためマイル当たりの建造費を縮小できます。残念ながらオールドドミニオン大学はこの列車を実用化するための費用を十分に投資できませんでした。
2. AMT試験軌道、ジョージア州
現在American Maglev Technology Inc.はオールドドミニオン大学のものと同様の原理を基にジョージア州パウダースプリングで使用するために2機めの試作機を建造中です。
3. Applied Levitation/Fastransit試験軌道、カリフォルニア州、サンタバーバラ市
Applied Levitation Inc.は屋内軌道を走る浮上式試作機の建造後、サンタバーバラ市に4分の1マイルの屋外軌道を建造する計画を立てています。
4. 北京S1
中国は防衛技術大学が開発した技術を基にして、最初の低速磁気浮上式鉄道を設置することが決定しています。6.3マイルのS1-West線では時速65マイルに達することができる磁気浮上式鉄道が操業する予定です。この系統は2年以内に完成します。
利点
1. 従来の列車に比べて磁気浮上式の列車の建造費用は低く騒音もあまり出しません。
2. 磁気浮上式鉄道は高架式であるため土地面積をあまりとらず、事故もあまり起きません。
3. 他種の交通手段に比べてエネルギーをあまり使いません。
4. 化石燃料に頼らないため有害物質を排出しません。
5. 磁気浮上式鉄道は浮上しており転がり抵抗に影響を受けないため、より速く走ります。
今後の展望
現時点では、磁気浮上式鉄道は従来の鉄道の代替として役立っています。より長い距離の移動を可能にする軌道を建造し列車を発展させることが今現在の目標であるとともに磁気浮上技術によって走行するコンセプトカーも想定しています。
トレンド
1. Kumho Epochコンセプトカー
Rob Dolton氏がデザインしたKumho Epochは、タイヤトレッドの再生ゴムを使用して軽量車体パネルを作りタケを使用してシャシーを作る実に環境に優しい車といえます。この自動車は磁気浮上システムによって作動し、タイヤの処理や形を変化させるElectro Active Polymerといった極めて未来的な機能に対応しています。
2. Nissan Motivity 400Cコンセプトカー
Nissan Motivity 400CはTryi Yeh氏が思い描いたコンセプトカーであり、磁気浮上システムによって作動します。この三角形の自動車は抗力を減らすためにこの形状に作りました。理論上、磁気浮上は空のトンネル内において車両を時速4000マイルで走らせることができます。もちろん法律上、自動車をその速さで走らせることはできませんが、磁気浮上の可能性を把握することはできます。
3. Maglev PTV
Steve DarbyshireがデザインしたMaglev PTVは磁気浮上と電子制御シャシー技術そして燃料電池を組み合わせて作動します。Maglev PTVはその空気力学的形状によって速度を上げ、長距離走行中には時速300マイルに達することも可能です。
制限
1. 磁気浮上式自動車は、不安定な電磁の引力が引き起こす事故を防ぐために常時コンピューターが監視、修正する必要があります。
2. 軌道の誘導率の制限によって最高速度が限られることがあります。
3. 磁場が発生するためペースメーカーを装着した乗客は磁気浮上式自動車に乗ることができません。その他にも、ハードディスクドライブやクレジットカードなどは磁気遮へいシステムに封入して破損しないようにする必要があります。